前田弘貴は自称発明家です。
彼がこれまでに発明した品は数知れず、家の中には日の目を見ないままの発明品がうずたかく積まれています。
はた目には、ほとんどの品が実用には程遠い代物に見えますが、本人はいたって真面目に取り組んでいるのです。
彼はもともとは普通のサラリーマンでした。
大手不動産会社で経理マンとして平凡な生活を送っていましたが、ある時ふと思いついて応募した発明コンクールで開眼したようです。
彼は元来器用な性質でしたので、生活用品なども自分なりに工夫して使っていました。
コンクールで身近な家庭用品をアレンジした小物がアイデア賞に輝いたのを間近で見て自分にもできると考えたのでしょう。
やがて定年を迎えた前田弘貴は、気兼ねなく発明に没頭する生活を送るようになりました。
彼は今日も朝から発明に夢中、食事中も愛犬との散歩でも何やら考え込んでいます。
でも、その顔は少年のように生き生きと輝き、内面の充実を物語っているのです。